宮島未奈『ギャルにひかれて寺マルシェ』(KADOKAWA)の読書感想。成瀬シリーズ完結後の第1作は、酒屋を継いだ30歳・英介とギャル僧まみたんの痛快青春譚。あらすじ、登場人物、成瀬との違い、どんな人に刺さるかをネタバレ控えめで紹介します。
ここ最近読んだ本のなかで、ダントツNo.1の幸福度でした。
腹を抱えて笑いながら読み進めて、最後はしっぽりホロリ。最近ちょっと落ち込み気味だった気持ちが、読み終わる頃にはすっかり吹っ切れていました。
宮島未奈先生の作品は、いつも僕を元気にしてくれる。本当に大好きです。
今回は、「成瀬」シリーズ完結後の第1作となる宮島未奈さんの新刊『ギャルにひかれて寺マルシェ』の感想を、ネタバレ控えめでたっぷり書いていきます。
この記事のまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ギャルにひかれて寺マルシェ(通称「#ギャルひか」) |
| 著者 | 宮島未奈 |
| 出版社 | KADOKAWA |
| 発売日 | 2026年9月2日(電子書籍も同日配信) |
| 定価 | 2,035円(税込) |
| ページ数 | 224ページ(四六判並製) |
| 形式 | 6編からなる連作短編集 |
| ジャンル | 青春・ヒューマンコメディ |
| 読後感 | 爆笑 → ホロリ → 元気100倍 |
| おすすめ度 | ★★★★★(今年いちばん幸福な読書体験) |
『ギャルにひかれて寺マルシェ』とは? 「成瀬」ロスに効く宮島未奈の新作
『成瀬は天下を取りにいく』で2024年本屋大賞を受賞し、「成瀬あかりシリーズ」三部作を完結させた宮島未奈さん。その“ポスト成瀬”第1作目”が本作です。
もともとは「小説 野性時代」に掲載された6編をまとめた連作短編集。装画は桜田佳代子さん、装丁はアルビレオが担当していて、表紙には茶色い巻き髪にピアス、ネイル、ギャルメイク……なのに服装は袈裟という〈ギャル僧〉真実子がドーンと描かれています。この表紙だけで「あ、これ絶対面白いやつだ」と確信しました。
タイトルの元ネタは「牛にひかれて善光寺参り」
タイトルの元ネタは、ことわざ「牛にひかれて善光寺参り」。思いがけないきっかけで、知らず知らず良いほうへ導かれていく——という意味です。
読み終えてから改めてタイトルを見ると、これがもう本作そのもの。ギャルに“ひかれて”寺へ行った英介が、どこへ導かれていくのか。ぜひ読んで確かめてほしいです。
あらすじ(ネタバレなし)
亡くなった父の酒屋「杉本酒店」を継いだ30歳の英介。商売に向上心があるわけでもなく、特に楽しみもないまま、なんとなく毎日をやり過ごしています。
そこへふらっと帰ってきたのが、保育園からの腐れ縁の悪友・光司。光司が持ちかけてきたのは、子どもの頃に近所の陵泉寺に埋めたタイムカプセルから、高価なポケモンカード「ひかるリザードン」を掘り起こすという、いかにも光司らしい計画でした。
偵察のために陵泉寺の〈寺マルシェ〉を訪れた2人が出会ったのは、ギャルメイクで法話をする尼僧。その正体は、中学までの同級生で、かつては真面目な学級委員長タイプだった真実子でした。
すっかり変わり果てた(?)真実子に呆気にとられる英介の横で、光司は「〈ギャル僧・まみたん〉として売り出せば儲かる!」と思いつき——。
主な登場人物
| 人物 | 立場 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 英介 | 「杉本酒店」三代目・30歳 | なんとなく生きてる、いちばん僕らに近い男 |
| 光司 | 英介の保育園からの腐れ縁 | 年中半袖、金儲けに目がない台風の目 |
| 真実子(まみたん) | 陵泉寺の副住職・元同級生 | 元優等生のギャル僧。法話が沁みる |
英介——「なんとなく」を生きる30歳に、自分を重ねた
正直に言うと、序盤の英介には自分を見ているような気持ちになりました。仕事はちゃんとしてる。でも、特別楽しいこともない。毎日がなんとなく過ぎていく。
そんな英介が、光司に振り回され、まみたんと再会し、寺マルシェで奮闘するうちに少しずつ変わっていく。その変化が派手じゃなくて、すごく自然なんです。だからこそグッとくる。
光司——迷惑なのに憎めない、最高の悪友
光司は完全にトラブルメーカーです。ポケカ発掘計画もまみたん売り出し計画も、動機はだいたいお金。なのに、なぜか嫌いになれない。こういう友達、ちょっと羨ましい。
まみたん——ギャルなのにありがたい、ギャルだからありがたい
そして本作の主役と言っていいのが、ギャル僧・まみたん。見た目のインパクトとは裏腹に、彼女の〈まみたん法話〉が本当に沁みるんです。真面目な委員長がなぜギャルになったのか、その理由も物語のなかでじんわり明かされていきます。
感想①:腹を抱えて笑って、最後はしっぽりホロリ
まず何より、とにかく笑える。
物語は酒屋の「角打ち」のなんてことない場面から始まるんですが、この時点でもう宮島節全開。地方のなんてことない日常に、ちょっとした混乱が起きて、ちょっとだけ状況が良くなっていく。この“いい湯加減”の空気感が、もうたまらなく心地いい。
英介・光司・まみたんの幼なじみ3人のやりとりは、まるで子どもの頃に戻ったみたいで、読みながら何度も声を出して笑いました。
なのに、最後はしっぽりホロリ。笑わせるだけ笑わせておいて、ちゃんと心の深いところに着地させてくれる。この緩急こそ宮島作品の真骨頂だと思います。
感想②:諸行無常——だからこそ「今この瞬間」を一生懸命に
本作を読んでいちばん心に残ったのは、無常ということでした。
良いことも、悪いことも、普通のことも、決してずっとは続かない。お寺が舞台の物語だからこそ、この当たり前の真理がすっと胸に入ってきます。
ずっと続かないなら、どうする?
英介が寺マルシェで仲間たちと奮闘しながらたどり着いたのは、自分にとってかけがえのない「楽しさ」でした。誰かに与えられたものじゃなく、自分で見つけた楽しさ。
読み終えたとき、僕も「今この瞬間を一生懸命に生きていたい」「自分にとって楽しいことをしていたいし、見つけたい」と素直に思えました。そして、なんだか見つかるような気がする。そんな前向きな気持ちにさせてくれる物語です。
感想③:縁と徳——ありがたい法話を聴いたような救い
もうひとつ大きかったのが、人との縁を大切にすること、徳を積むことの大切さ。
腐れ縁の光司がいなければ、英介は寺マルシェに行かなかった。まみたんとの再会がなければ、英介の日常は変わらなかった。人生って、こういう思いがけない縁でできているんですよね。
読んでいるあいだ、まるで本当にありがたい法話を聴かせていただいたような救いと幸福感に満たされていました。説教くさくないのに、ちゃんと心に届く。ギャル僧という設定が、このバランスを絶妙に成立させているんだと思います。
最近少し落ち込み気味だったんですが、この本で完全に吹っ切れました。とびきり素敵な物語です。
「成瀬」シリーズとの違いは?
成瀬ファンの方がいちばん気になるところだと思うので、僕なりに比べてみました。
| 比較ポイント | 成瀬あかりシリーズ | ギャルにひかれて寺マルシェ |
|---|---|---|
| 主人公 | 我が道をいく女子・成瀬あかり | なんとなく生きる30歳の酒屋・英介 |
| 主人公の年代 | 中学生〜大学生 | 30歳の大人 |
| 舞台の空気 | 滋賀・大津のご当地感 | 地方の町の酒屋とお寺 |
| 読後感 | 突き抜けた爽快感 | 笑いのあとにじんわり沁みる幸福感 |
| 刺さる人 | 自分の道を応援してほしい人 | 毎日がなんとなく過ぎている大人 |
| 共通点 | 地方の日常、チャーミングな登場人物、元気がもらえる読み味 | ← 同じく◎ |
成瀬が「突き抜ける主人公を見て元気をもらう」物語だとしたら、寺マルシェは「大人になりきれない大人が、自分の楽しさを見つけ直す」物語。30代以降の読者には、むしろこっちのほうが刺さるかもしれません。
成瀬ロスの方は、ぜひ。心の穴にまみたんがすっぽりハマりますよ。
正直僕は「成瀬シリーズ」よりも好きでした。
こんな人におすすめ
- 「成瀬」シリーズが好きで、成瀬ロスになっている人
- 最近ちょっと落ち込み気味で、元気をもらえる本を探している人
- 毎日がなんとなく過ぎていると感じている30代・40代
- 腹を抱えて笑える小説が読みたい人
- 子どもの頃の友達に、久しぶりに会いたくなっている人
- ポケモンカード世代の人(ひかるリザードン、わかる人にはわかる!)
よくある質問(FAQ)
Q. 『ギャルにひかれて寺マルシェ』は成瀬シリーズを読んでいなくても楽しめますか?
A. まったく問題ありません。登場人物も舞台も成瀬シリーズとは別の独立した作品です。宮島作品の入門書としてもおすすめです。
Q. 長編ですか?短編集ですか?
A. 6編からなる連作短編集です。1話ごとに区切りがあるので読みやすく、通して読むと一つの大きな物語になっています。
Q. 試し読みはできますか?
A. KADOKAWAの文芸WEBマガジン「カドブン」で、第一章「ひかるリザードン」の試し読みが公開されています。BOOK☆WALKERでも試し読みが可能です。
Q. ページ数と読了時間の目安は?
A. 224ページです。テンポがいいので、2〜4時間ほどで一気に読めると思います。僕は止まらなくなりました。
Q. 電子書籍はありますか?
A. 紙の単行本と同日の2026年9月2日から電子書籍も配信されています。
まとめ:宮島未奈先生、今回も元気をありがとうございました
『ギャルにひかれて寺マルシェ』は、
- 腹を抱えて笑えて
- 最後はしっぽりホロリとして
- 無常の世の中だからこそ「今」を楽しもうと思える
- 縁と徳の大切さを、ギャル僧の法話で教えてくれる
そんなとびきり幸福な一冊でした。
ここ最近読んだ本のなかでダントツNo.1。落ち込んでいる人にも、なんとなく毎日を過ごしている人にも、自信を持っておすすめします。
宮島先生の作品は、いつも僕を元気にしてくれる。次回作も今から楽しみで仕方ありません。

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