本屋大賞6位×江戸川乱歩賞受賞作『殺し屋の営業術』の待望の続編、『殺し屋の出世術』を読みました。
結論から言うと、「もうさすがにだめかも」という窮地の連続を、主人公・鳥井が”営業力”一本で突き進むスリリングな展開は今作も健在。気づけばノンストップで最後まで読み切っていました。
この記事では、あらすじ(ネタバレなし)、前作との違い、良かった点・気になった点、そして読み終えて自分が感じたことを正直に書いていきます。
この記事のまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 殺し屋の出世術(〈営業マン鳥井一樹シリーズ〉第2巻) |
| 著者 | 野宮有(のみや・ゆう) |
| 出版社 | 講談社 |
| 発売日 | 2026年7月29日(電子版は7月28日) |
| 価格 | 2,255円(税込)/四六判変型・256ページ |
| ジャンル | どんでん返し営業論理ミステリー |
| 読了後の満足度 | ★★★★☆(4.0/5) |
| こんな人におすすめ | 前作が好きな人/頭脳戦・駆け引きものが好きな人/仕事で”武器”を持ちたい人 |
| ひとこと感想 | 窮地の連続×シーソーゲームでノンストップ。人間ドラマの深みはパワーアップ! |
『殺し屋の出世術』とは?前作『殺し屋の営業術』からの続編
前作『殺し屋の営業術』はどんな作品?
前作『殺し屋の営業術』は、2025年の第71回江戸川乱歩賞受賞作。さらに王様のブランチBOOK大賞2025を受賞し、2026年本屋大賞では乱歩賞受賞作として史上初のノミネート、しかも第6位という快進撃を達成した話題作です。
アポイント先で殺人現場に遭遇し、殺し屋に消されかけた凄腕営業マン・鳥井が、なんと営業トークで殺し屋を”説得”して殺人請負会社に入社してしまう――という、「その発想はなかった!」な設定が最高でした。
『殺し屋の出世術』のあらすじ(ネタバレなし)
鳥井が殺人請負会社〈極東コンサルティング〉に入社して半年。個性的な殺し屋たちを束ねながら順調に業績を重ねていたところ、突如、謎の男・鷹見に拉致され、上部組織〈巣ヶ谷一家〉の組長のもとへ連れていかれます。
そこで告げられたのは、鳥井と鷹見による出世レースの開幕。
- 勝者には〈極東コンサルティング〉社長の座
- 敗者には「死」
もちろん鳥井に拒否権はなし。丸腰の営業マンが、今度は「社内営業」と「出世」を武器に命がけのノルマに挑む――というのが今作です。
主な登場人物
| 人物 | ポジション |
|---|---|
| 鳥井一樹 | 主人公。極東コンサルティングの凄腕営業マン |
| 鷹見竜之介 | 社長の座を争う新ライバル。謎の男 |
| 翼 | 鷹見の護衛を務める女性 |
| 姫香 | 今作で心情が深く描かれるもう一人の女性 |
| 耳津・籠原・樫尾 | 前作でも人気の”はみ出し者”殺し屋メンバー |
感想①:「もうさすがにだめかも」窮地の連続をノンストップで
今作の鳥井は、前作にもまして「もうさすがにだめかも」という窮地の連続です。
正直、何度「これは詰んだでしょ……」と思ったか分かりません。それでも鳥井は、自らの生命線である「営業力」一本で突き進んでいく。武器も腕っぷしもない営業マンが、言葉だけで死線をくぐり抜けていくスリリングな綱渡りの展開は、前作から変わらず健在でした。
ページをめくる手が止まらず、完全にノンストップで読み進めてしまいました。
感想②:ライバル鷹見とのシーソーゲームがヒリヒリする
社長の座を争うライバル・鷹見とのやられてはやり返すシーソーゲームが、今作の大きな見どころです。
さらにそこへ、
- 浦乃組
- 周防商会
- かつての敵・鷗木
といった面々が介入してきて、状況はどんどん複雑に。様々な人物の思惑や”人の動かし方”が入り乱れる、ヒリヒリしたストーリーがめちゃくちゃ面白かったです。
誰が誰をどう動かしているのか、誰が味方で誰が敵なのか。そういう駆け引きの妙が好きな人には、たまらない一冊だと思います。
感想③:ラストはミステリーとしてはやや拍子抜け?
ここは正直に書きます。
話のスケールが前作よりも壮大になった分、ラストの展開はミステリーとしてはやや拍子抜けというか、前作ほどの驚きや爽快感にはやや欠けるように感じました。
前作の伏線回収が「うわ、そういうことか!」と鳥肌が立つレベルだっただけに、どうしても期待値が上がっていたのかもしれません。登場人物や勢力が増えたことで、一つの”どんでん返し”に収束していくカタルシスは、少しだけ分散してしまった印象です。
感想④:姫香と翼、二人の女性の心情で人間ドラマがパワーアップ
一方で、明確にパワーアップしたと思ったのがここ。
姫香と翼という二人の女性の心情に、深めにスポットが当たっているんです。それぞれが抱えているもの、選ぶ道に切なさや共感を覚える場面が多く、前作にはなかった人間ドラマとしての深みが加わっていました。
公式でも「ひっくり返すのはダークヒロイン2人!」と打ち出されていますが、まさに今作の”心”の部分を担っているのは彼女たちだと思います。
前作『殺し屋の営業術』と今作『殺し屋の出世術』を比較
| 比較ポイント | 殺し屋の営業術(1作目) | 殺し屋の出世術(2作目) |
|---|---|---|
| ミッション | 営業ノルマ(2週間で2億円) | 出世レースで勝利(敗者は死) |
| スリル・緊張感 | ◎ | ◎(窮地はむしろ増量) |
| 物語のスケール | ○ | ◎(組織・勢力が入り乱れる) |
| ミステリーの驚き・爽快感 | ◎ | ○(やや控えめ) |
| 人間ドラマの深み | ○ | ◎(姫香と翼の心情描写) |
| 個人的おすすめ度 | ★★★★★ | ★★★★☆ |
驚きの1作目、深みの2作目。どちらが上というより、シリーズとしての厚みが増したという感覚です。
鳥井の「本当」と「嘘」――命を削って積み上げた”真の営業力”にロマンを感じた
最後まで読むと、鳥井のやることなすこと、どれが本当でどれが嘘だったのか、もはや分からないんです。
それでも鳥井は、時には相手に希望を与えながら、ノルマ達成のためにあの手この手を繰り出していく。
それは単なる嘘やはったりとは違う。自分が命を削りながら積み上げてきた”真の営業力”を武器に、ひたすら邁進していく。その姿に、僕はロマンを感じました。
読み終えて:自分だけの武器で、思い切り戦ってみたい
僕自身、決して弁が立つタイプではありません。だから鳥井に惹かれるのは、ないものねだりというのも正直あると思います。
でも、この本を読んで思ったんです。
鳥井にとっての営業力のように、自分にとってかけがえのない武器で、自信をもって思い切り戦ってみたい。
その武器は、きっと一日で手に入るものじゃない。
だから、自分もコツコツ頑張ろう。そう素直に思わせてくれる一冊でした。
よくある質問(FAQ)
Q. 『殺し屋の出世術』は前作を読んでいなくても楽しめますか?
A. 鳥井が極東コンサルティングに入った経緯やメンバーの関係性は前作が前提なので、『殺し屋の営業術』から読むのが断然おすすめです。かつての敵・鷗木の介入など、前作を知っているからこそ熱くなる場面もあります。
Q. 『殺し屋の出世術』の発売日と価格は?
A. 講談社より2026年7月29日発売(電子版は7月28日)、定価**2,255円(税込)**です。
Q. グロい描写や暴力シーンは多いですか?
A. 殺し屋や組織が絡む物語なので緊張感のある場面はありますが、主軸はあくまで営業トークと頭脳戦。アクションよりも”言葉の駆け引き”を楽しむ作品です。
Q. ビジネス書的に役立つ内容もありますか?
A. 公式でも「仕事で使えるテクニック満載!?」とうたわれている通り、相手の心理を読む・人を動かすといった営業や社内交渉のヒントを感じる場面は多いです。小説として楽しみつつ、ちょっと仕事に持ち帰れる感覚があります。
Q. 前作と比べてどうでしたか?
A. ミステリーとしての驚き・爽快感は前作に軍配。一方で、スリルの量と人間ドラマの深みは今作がパワーアップしていると感じました。
まとめ:『殺し屋の出世術』は”営業力”というロマンを味わう一冊
- 「もうさすがにだめかも」の窮地を営業力一本で突破する展開は健在
- ライバル鷹見とのシーソーゲーム、浦乃組・周防商会・鷗木が入り乱れるヒリヒリ感
- ラストのミステリー的な驚きは前作よりやや控えめ
- 姫香と翼の心情描写で、人間ドラマとしての深みは大幅アップ
- 自分だけの武器で戦いたい、コツコツ頑張ろうと思わせてくれる
前作が好きだった人はもちろん、「自分には武器がない」と感じている人にこそ読んでほしい一冊です。シリーズ3作目があるなら、鳥井がこの先どこへ向かうのか、今から楽しみです。

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