古舘伊知郎「トーキングブルース」感想|物語と悲しみが交差する圧巻の2時間

戯言

この記事のポイント

•古舘伊知郎の「トーキングブルース やっかいな生き物」(恵比寿ガーデンホール)のライブレポート

•「人間は物語の中を生きている」というテーマを軸にした、古舘節全開のトーク内容を詳解

•人生初の講談披露(演目:愛の不時着)に感じた、言葉の天才による圧倒的な表現力

古舘伊知郎の単独ライブ「トーキングブルース やっかいな生き物」に参戦!2時間ノンストップで繰り広げられる「物語」をテーマにした圧巻のトークと、人生初の講談で披露された『愛の不時着』の衝撃をレポートします。言葉の天才が定義する「ブルース」とは?ライブの興奮と感動を筆者の主観たっぷりに綴ります。

古舘伊知郎の「トーキングブルース」に行ってきました。古舘伊知郎が2時間ただひたすらにしゃべる、それによって作り出された超大作。その内容と感想を書いていきます。

会場は恵比寿ガーデンホール。初めて来ました。ちょっと場違いなところに来てしまった気がして、ちょっと気が引けます。

(小生、こういうおしゃれな所にはあまり縁がありません)

それはさておき、入場の待機列に並び会場入り。もうこの時点でワクワクが止まりません。

1. 冒頭:いきなり炸裂する「古舘節」

登場すると第一声、マイクを通さず「今日は来てくれてありがとう」。そして8月に行った無観客オンラインライブを引き合いに出し、「ライブはお客さんがいてこそ。無観客ライブって言い方は『静かなマスク会食』と同じくらいおかしい」といきなり古舘節炸裂。

そして「何から話そうか、やっぱり渡部かな」と不倫騒動の記者会見に触れます。渡部はおどおどしすぎ、思い切って自分の”癖”を治したいくらい言えばよかったんじゃないかと。

そして渡部と好対照にかっこいい人物として、みのもんた氏を挙げる。先日、パーキンソン病であることを公表したみの氏。公表前に料亭で病気のことを聞いていた古舘は、慕っていた大先輩の潮時に涙。みの氏は告白を終えるとすぐさま、「じゃ、芸者よぼうか」といいその場は大盛り上がりだったエピソードを披露。そして、みの氏の女性問題に対し、週刊誌等で名前が挙がった女性たちがみの氏との関係について口にしなかったのは、みの氏の入れ知恵であると推察。「好かれてると思うんだけどね、まだ」などと自分がやられ役になって丸く収める、そんなやり方がかっこいいと。

2. 「数字」と「遠くの物語」への違和感

ここから話は「人間は物語のなかを生きている」という本題へ。

まずは数字の物語。0歳と100歳の平均寿命は50歳だけども、50歳まで生きた人はいない。今日の東京都の新型コロナウイルス感染者数は70人ですと聞くと少なくてよかったとほっとするけれど、もし自分が感染者の一人だったら「よかった」では済まされない。数字の物語と人の本質には溝がある。

続けて、人間の物語について。自分を遠くに置いて客観視し、遠くの物語に美しく怒るという傾向があるという話。黒人差別問題に対して大坂なおみ選手が「人種差別が悪いと多くの人が言うけれど、反人種差別主義者だと言い切らない」と発言したことを例に出し、結局遠くの物語に対しては眉をひそめるだけだと。

アメリカ大統領選挙の話も独特でした。日本人があれだけ関心があったのは、東京オリンピックが中止になった穴埋めとして「日本人のナショナリズム」や「勇気を与えてくれてありがとう」という物語が失われたからではないか、と推察。結論、アメリカ大統領選挙から学んだことは「日本人はアメリカについて知らないし、日本人のアメリカ物語なんてアメリカには関係ない」ということ。

さらに、菅総理(当時)の経歴が「叩き上げ」と称されるのも物語だと指摘。秋田の雪深い街に生まれ……というエピソードも、ただ順風満帆なだけじゃないかと。

3. 「美味しい」という物語の正体

皆さん、美味しいって何ですか?と問いかけ。

前日、たらふく寿司を食べた翌日、友人に寿司を食いに行こうと誘われ断ろうと思ったが、「食べログ4.8の店だ」と聞いた途端「行く」と返事をする。みんなで楽しく食事をし満足して店を出ても、食べログ2.0だと知るとがっかりする。寒空の下小一時間並ぶラーメン屋は、店に入った瞬間、食べる前からおいしい。大好きで通ってる店でも、弁当で食べるとそこまでの感動はない。

おいしいなんてそんなもんじゃないかと。会席料理も、農家の○○さんが作った野菜も、ひつまぶしも、全部「物語」だと。

4. 物語と悲しみ、そして「ブルース」の定義

そして、ヒューマニズムの物語やここでは言えない物語の話を経て、今回の核心に入ります。

人間が物語を生きるなかで、物語と人間の本当の想いはぶつかり、きしみ、揺れている。そこに悲しみが宿っている。それを俺は「ブルース」と定義している。

人間はほとんどが物語を生きている。我々は国家という物語を生きているが、戦争に負けても国家は泣かない。泣くのは国民。国家という物語のために死んでいく兵士の悲しみはあっても、国家は「悲しい」とは言わない。学校も企業も同じ。だから人間が物語を優先させるが故に、どうしても本当の想いが沈む。そこに悲しみが現れると思っている。

5. 圧巻の講談:オリジナル版『愛の不時着』

そんな悲しみも含めた物語を披露したい、と人生初の講談を披露。神田伯山氏に稽古を付けてもらったというネタは、古典の「中村仲蔵」とみせかけて、オリジナルの『愛の不時着』。

内容は割愛しますが、これが本当に凄かった。圧巻のステージでした(言葉にならなくてすみません)。講談を観たこともなければ『愛の不時着』もタイトルしか知らなかった私。講談の独特な言い回しにも関わらず、世界観と感情が目の前に映し出されて、すべてが腑に落ちる感じ。ラストは本当に感動。これでドラマは見なくてもいいと思えるくらい、物語を味わえました。

6. クライマックス:物語の過剰包装を解く

講談を終え、クライマックスへ。

今日は一貫して人間の物語について考察してきたけれど、物語の過剰包装を解くことは大事だと思う。手前の物語に酔いしれることで難を逃れることを我々は知っているから。

物語を剥いでいくと、人間はユニクロを着てユニクロを食べているってことだろ、良い悪いはべつにして。血圧やコレステロールの薬も世界的な超巨大市場。130超えたからって急に怖がる必要なんかないし、飲んでも結構だけども「物語」だってことは見破っておいたほうがいい。

こういうことを言ってる俺だけど、ちょっとでも長生きしたいからしっかりサプリメントを飲んでる。要するに、俺は健康な自分を遠くにおいて、医療のこととかに美しく怒ってみせたいわけ。みんなだって同じじゃないの?ここに来てるってことは俺と似てるところがあるはずだから。

感想:心が震えた2時間

正直、古舘さんが話されたことすべてを理解し納得できた訳ではありません。でもそれは、感情の揺れ動きのようなものを語られているからのような気がします。だから、ものすごく難しい説明もありましたが、何となく理解できたような感じになりました。

それから彼の天才的な言葉のセンスには脱帽です。(こうして記事を書いていて、自分の表現の陳腐さ、文才のなさを身にしみて感じます)そして何より、一言一言、一瞬一瞬が心の奥底に訴えかけてくる、心が震えた2時間でした。なかなか伝わらないかもしれませんが、貴重な体験でした。

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よくある質問(FAQ)

Q1: 「トーキングブルース」とはどのようなライブですか?

A1: 古舘伊知郎がマイク一本で2時間以上しゃべり倒す、1988年から続く伝説的な単独トークライブです。

Q2: 古舘伊知郎が定義する「ブルース」とは何ですか?

A2: 社会や国家といった「物語」と、個人の「本当の想い」がぶつかり、きしむ時に生まれる悲しみのことを指しています。

Q3: ライブで披露された講談はどこかで見られますか?

A3: ライブ限定のパフォーマンスであることが多いですが、古舘伊知郎の公式YouTubeチャンネルなどで一部のエッセンスが語られることがあります。

 

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